世界の高齢者


高齢者の生活を国際比較
日本の問題点浮き彫りに
 『高齢者の生活と意識に関する国際比較』の調査結果が、6月、内閣府から発表された。1980年から、5年ごとに行われているもので、日本、米国、韓国、ドイツ、スウェーデンの60歳以上の男女計5,214人が回答、高齢者の生活ぶりが浮きぼりにされた。
 「日常生活の援助が必要なく、まったく不自由なく過ごせる」との回答は、日本89.8%、米国63.3%、韓国67.2%、ドイツ60.6%、スウェーデン87.0%で、あらためて、元気なお年寄りが増えていることがわかる。健康法としては、各国とも「休養や睡眠を十分とる」「規則正しい生活を送る」が上位を占めたが、「健康診断を定期的に受ける」は米国79.7%に対して、日本47.3%、ドイツ63.7%、スウェーデン39.2%、韓国29.1%だった。また「酒やタバコを控える」は米国61.1%、日本16.8%、韓国21.6%、ドイツ18.2%、スェーデン10.5%という結果になった。米国は、国民全員をカバーする公的な医療保険がなく、医療費が高いといわれる。それ故、健診や禁煙など予防に熱心な高齢者が多くなるのかもしれない。
 国民皆保険制度が整備された日本の医療は世界一といわれるが、医療サービスに対して「満足している」は、米国74.8%、スウェーデン64.6%、ドイツ55.7%、日本38.2%、韓国27.4%の順となった。ただこの数字に「まあ満足している」を加えると、各国とも90%を超えるので、その満足度は押しなべて高いことがわかる。
 日本の高齢者の回答で気になったことは、「同居の家族以外で、困った時に頼れる人がいない」との回答が20.3%で、米国10.5%、スウェーデン9.7%、ドイツ5.4%より高かったことだ。韓国も20.0%だったので、家族関係が濃厚な東アジア共通の傾向かもしれない。ちなみに「頼りになる友人がいる」は、日本17.2%、韓国18.3%に対して、米国44.6%、ドイツ40.7%、スウェーデン34.9%だった。また、「近所の人たちとの交流がほとんどない」との回答も日本は31.6%で、米国29.2%、韓国とスウェーデン17.3%、ドイツ8.6%より高かった。少子高齢社会のトップランナーである日本の問題点が、各国と比較することで、明確になったように思う。
日刊工業新聞 2011年8月26日

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