米国の高齢者


認知症の危険因子改善
まずは生活習慣病対策から
 1位がん、2位認知症、罹りたくない病気の順位である。米国、フランス、ドイツ、ポーランド、スペインで行われたアンケート調査の結果で、2011年7月、パリで開かれた国際アルツハイマー病協会の総会で発表された。またWHO(世界保健機関)が12年4月11日に発表した報告書によると、認知症の患者は毎年770万人ずつ増え続け、2050年には100人に1人以上、1億1540万人に達するという。さらに、その7割は高齢化が著しい低・中所得国に集中すること。また60歳以下の若年性認知症が2~10%を占めると予測され、地球規模での対応策が求められている。
 私たちは、認知症と向き合って生きていかなければならない。もちろん、その予防法を確立するためにさまざまな研究が、世界で試みられている。九州大学が行っている久山町研究では、認知症と診断されていない60歳以上の男女1017人を1988年から15年にわたって観察をした。その結果は232人が認知症になり、糖尿病の人が認知症を発症する危険性は、血糖値が正常な人と比べ1.74倍、アルツハイマー病だけに限れば2.05倍も高いことがわかった。
 またアルツハイマー病と生活習慣病の危険因子となる肥満、喫煙、糖尿病、うつ病などとの関連を分析したカリフォルニア大学サンフランシスコ校の疫学研究がある。10年、英国の医学誌ランセットの電子版に掲載されたが、それによると米国人のアルツハイマー病に対する危険因子の影響は、運動不足21%、うつ病15%、喫煙11%、高血圧8%、肥満7%、糖尿病3%となった。実に患者の57%にあたる300万人の発症に、これらの危険因子が関係をしていることもわかった。反対に、その25%を改善すれば、50万人の発症を防ぐことができるという。
認知症を予防するため、私たちがまずしなければならないのは、生活習慣病対策なのである。
日刊工業新聞 2011年4月27日

>> 老いを思うTOPに戻る