米国の高齢者


東アジアの暮らしに興味
「老いは自然」高い幸福度
 健康志向の強い米国人の間では、東アジアの暮らしぶりに興味を持つ人が多い。アジア系米国人の高齢者を対象に意識調査をしたところ、生活の満足度がとりわけ高いことがわかったからだ。米国流のサクセスフル・エイジングを生きがいにすると、いつまでも生き生きと行動しなければならない。確かに、50歳代、60歳代を10年前の人たちと比べれば、体力、知力とも若返ったとの研究結果が発表されている。が、いわゆる後期高齢者といわれる75歳を過ぎたころからは、心身のトラブルが起こりやすくなり、自立をして生きることが難しくなる。米国流では認め難い、老いを受け入れねばならず、生活の満足度は、どうしても低くなってしまう。
 これに対して、東アジアでは、老いを自然の摂理としてとらえる。その考え方が、アジア系米国人の幸福度を高めているといわれる。また共同体意識が強く、家族、友人による支援体制ができやすいことも見逃せない。東アジアの死生観、文化が長寿社会を幸せにする鍵の1つであると考える米国人研究者も少なくない。
 ただ残念なことに、日系米国人の東アジア力は、年々落ちていっているようだ。例えばニューヨークでは、日系米国人の72%は米国生まれである。中国系米国人13%、韓国系米国人6%であることを考えると極めて高い。母国語が英語である日系米国人が増え続けおり、米国の東海岸の日系コミュニティは、いずれは消失してしまうとさえいわれている。
 実際、ニューヨーク都市圏に住む在留邦人・日系人は、10万人といわれるが、総人口に占める割合は1%以下でしかない。しかも永住者、長期滞在者の割合が高く、高齢化が進んでいる。問題は、日系コミュニティには、十分な支援体制がないことだ。そのため、中国系米国人の高齢者施設に入居して、東アジア流のサービスを受けている人もいる。また最近は、米国に出かけると、私はしばしば中国人や韓国人に間違えられてしまう。時代が大きく変わろうとしている。
日刊工業新聞 2010年12月17日

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